自分の言葉を持ってはならない

ビニールの城見てきました。

V落ちする前からごうくんの舞台は何作か見ていて、舞台が好きっていう人にとって森田剛という役者さんは気になる人なんじゃないかな、と。

私が今までに見た何作かも、もれなくよかったので、今回もこの上なく期待していきましたし、当然、その期待は裏切られることはなかったです。

もう幕は下りているのでネタバレも何もないですが、一応隠します。

 

アングラにあまりご縁がなかったので、唐十郎さんの作品ってそんなに見たことないのですが、言葉が多い、でも多いって印象以上に言葉がすごく綺麗。でもだからこそこれ大変だなあとも思ったのです。

言葉がすごく緻密に絡み合っているので誰か一人でも間違ったりアドリブなんて入れたら崩れちゃうんですよね、世界観が。

こういう言い方したら失礼なのかもしれないけど、J舞台とか若いJの子が出る舞台とかアドリブありきだったりするじゃないですか?まああれは1つの公演に何度も見に来るお客様が多いからそういう人たちに対するサービスってのもあるんだろうけど。

(でも、きっちり台本通りでも何度見ても発見があるっていうのが本当に美しい脚本と演出とも言うような気がする)

ごうくん演じる朝顔の言葉がすごく少年っぽくて、でもたとえば「夜中に~」の時は本当に少年の役だったから声もしゃべり方もとても幼くて子ども!って感じだったのだけど、朝顔は年齢はもう大人になってて、でも中身だけが大人になりきれないって人だから、その語りはすごく少年っぽいんだけど、でも完全に子どもではない。意図してやっているのかそれとも演出なのかはわからないけど、いずれにしてもすごいなあ、と。

生身の人間を愛せなくて人形と2人だけの世界で生きている。いや、人形は結局彼の分身だから他者を愛せない、他人と向き合えないまま大人になった男のお話。

難しい役なのかな、私にはまったく想像ができないけれど、でもごうくんはとっても軽やかに朝顔を生きていた。モモとの関係に切なくなったりするけど、でもその切なさの大きな要因はむしろモモ側で、朝顔は、どうなんだろう、あの後誰かと生きていくことができるのだろうか?それともまた夕顔との二人だけの世界に戻ってしまうのだろうか?

根拠ない個人的な感想だけど、朝顔の呼ぶ「夕ちゃん」はどこか幼いし、現実感がないというか、でもモモが呼ぶ「夕ちゃん」と「朝ちゃん」は体温があってすごく悲しい。

だからなんとかく、この二人が交わることはないんだろうなって感じてしまうというか。

宮沢りえちゃんは去年、海辺のカフカで見たけれど、別人だった。なんなら声も違うじゃんってくらい、役ごとにこんなに違うのかってくらい。完全に別の人だった。

 

ビニ城のサイトで演出の金さんが蜷川さんの言葉としてこんなことを書かれていました。

「役者は一生自分の言葉を持つな。そこに悲惨と栄光がある」。役者は自分の生理で台詞を変えてはいけない。

 

なんかすごいね。衝撃だった、この言葉。でも思い返すと蜷川さんの作品ってそうなのかもしれない。

時々、役者さんの生身、役じゃなくて生身のアドリブとかあるでしょ?もしかしたら蜷川さんからしたらそういうのはコントとか漫才であって演劇ではないのかもしれない。

でも役者さんだって人間なんだから、自分の言葉をすべて閉じこめるってすごく大変だろうな、と。

で、これ読んだときごうくんが金閣寺やった時にあの本を全部覚えたって話を思い出した。自分の言葉を完全に封じ込んで、役のその人になるのにはそこまでやらなきゃいけないのかと。森田さんは天才ってよく言われるけれど、それに見合うだけの努力もしている人だよなあと。

 

何書きたいのかわからなくなってきたよ(通常運行)

 

ビニ城でただただ単純に、わっ!カッコいい!って思ったのが最初に人形たちのいるお店で朝顔電気ブランをあおったらビリビリ!ってなってロックっぽい音楽ががーんっかかって、セットががががって大転換するところ。(擬音語ばっかりの頭悪い文章ですみません)あれで一気に引き込まれた感ある。

 

先日、一緒に見たいとことこの作品の話をしてて、この作品がわからないって人も結構いるって話から何がわからないんだろうね、って話してて。

アングラと呼ばれる作品の中ではわかりやすい話なんだと思うんですが、ただ、あの何とも言えない浅草の感じがわからない人は多いのかもしれない。

デンキブランって何って方も多いでしょうし(私は子どものころから神谷バーの中吊り広告がある電車に乗ってたので、下戸なんで飲んだことはありませんがデンキブランって言葉は本当に子どものころから知ってた)瓢箪池もほおずき市も??って人は多いかもしれない、東京の人だったとしても。なんていうか浅草特有の文化だから。

それから世代的に難しいのは豊田商事事件。

ググってみたらビニールの城の初演85年っていうのはまさに豊田商事事件が世の中にクローズアップされて大問題になった年らしく。

だとしたら、初演の時は「豊田商事~」ってセリフは客席全体がおおってなったのかもしれない。30年経って、いまでは「豊田商事???」ってお客様が多くなったのも分かりずらいとされるところかもしれない。

 そもそもビニ本って言葉自体が初めて聞いたって方も多いんでしょうね。

 

 

ごめんなさい、100%言い訳ですが、この記事、何日もぽつぽつ書き足してるので、本当に脈絡なくて、着地点がわからないって自分でも思います。

 

 だらだら書きましたけど、言いたいことはただ一つ、この作品を見ることができてよかった。朝ちゃんと出会えて良かったということ。

出演者の皆さま、スタッフ関係者の皆さま。素敵な舞台をありがとうございました。